私たちは、理論化学・計算化学を用いて化学反応や機能性材料の機能発現のメカニズムを明らかにし
得られた計算データを機械学習をはじめとするインフォマティクスの技術を用いて解析することで
新規材料の設計指針を構築することを目指しています。
また、大量の実験データをインフォマティクスを用いて解析することで、データの中から実験成功に直結する因子を抽出し
新たな計画指針の提案にフィードバックすることに取り組んでいます。
そして、実験系の研究者との連携を推進し「理論・実験・データ科学」の異分野融合により
新しいマテリアルズサイエンスを開拓するためのパラダイムシフトを創出していきたいと思います。
自動反応経路探索を用いる触媒反応の機構解明
計算化学は、化学反応における反応中間体や遷移状態の分子構造・エネルギー・電子状態の可視化を可能にするため、様々な反応の機構解析に用いられてきました。しかし、従来の計算化学による反応機構解析では、研究者が反応経路や反応中の構造変化を予測しなければならず、複雑な反応系の解析には、多くの困難が伴っていました。
本研究室では、近年開発された「自動反応経路探索 (Global Reaction Route Mapping)」を駆使することで、複雑な触媒反応の機構を解明し、新しい触媒設計の指針の構築を行っています。
ランタノイド発光材料の発光・消光過程の解明と新規材料設計
ランタノイドを含む化合物は4f軌道間の電子遷移に起因する発光を示し、蛍光灯やディスプレイだけでなく、温度センター・生体内プローブ等の発光センサーとして幅広い分野で用いられています。一般に、発光材料の発光のしやすさを理論的に見積もるには、基底状態と励起状態のポテンシャルエネルギー曲面(PES)が交差する点におけるエネルギーと分子構造を調べる必要があります。
しかし、ランタノイド化合物の場合、励起状態の理論計算が非常に難しいため、理論的な機構解明や分子設計は全く行われてきませんでいた。本研究室では、この問題を解決するために、ランタノイド化合物の励起状態のPESを近似的に記述する方法「エネルギーシフト法」を開発し、様々なランタノイド化合物の発光に関する機構を明らかにしています。